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湯口 貴史*; 小北 康弘; 加藤 丈典*; 横田 倫太郎*; 笹尾 英嗣; 西山 忠男*
Journal of Asian Earth Sciences, 192, p.104289_1 - 104289_16, 2020/05
被引用回数:5 パーセンタイル:31.49(Geosciences, Multidisciplinary)本研究は、花崗岩質マグマから晶出した石英を用いて、石英の生成メカニズムや結晶化温度からマグマ溜りの冷却プロセスに関する熱的変遷を論じた。本研究では、中部日本の土岐花崗岩体に産出する石英に着目し、(1)石英粒子の形状や産状の情報、(2)石英の結晶内部構造を反映するカソードルミネッセンス(CL)パターン、及び(3)石英中のチタン濃度から算出した結晶化温度を取得することで、石英の連続的な成長様式に関する新知見を得た。土岐花崗岩体の石英は、複数のCLパターンに区分できる。それらのCLパターンの相違は、メルト(マグマ)の温度やメルト中のチタンの拡散性に依存する。石英のCLパターンと結晶化温度条件から、土岐花崗岩体を形成したマグマの冷却温度条件を詳細に区分した。本研究により、マグマ溜りの詳細な熱史の解明に石英を用いたアプローチの有用性が示された。
小北 康弘; 湯口 貴史*; 加藤 丈典*; 横田 倫太郎*; 笹尾 英嗣; 西山 忠男*
no journal, ,
本研究では、中部日本の土岐花崗岩体を対象とし、(1)石英の岩石記載と(2)CL観察、(3)チタン濃度定量分析を組み合わせて議論し、石英の結晶化プロセスについて言及を行う。具体的には、(1)石英の岩石記載では、結晶の外形や産状に着目し、(2)CL観察では、ゾーニングの有無や、ゾーニングの様態に応じてパターン分類を行った。(3)チタン濃度定量分析では、名古屋大学のEPMAを用いて高精度のチタン定量分析を行い、TitaniQ温度計を用いて結晶化温度を決定した。分析の際には、結晶の形状や産状、CLパターンを考慮しつつ分析点を決定した。その結果、石英のCLパターンはオシラトリーゾーニングを含む複数のパターンに区分でき、それらは形状や産状そして結晶化温度と関連を持つことが明らかになった。これらの結果から、石英が冷却する花崗岩質マグマ中で、結晶化プロセスの連続的なイベントを持つことを論じる。また中部日本の土岐花崗岩体は3つの岩相を有するが、石英は3つの岩相で共通して観察される。このため3岩相を通じて産出する石英の結晶化プロセスから、土岐花崗岩体の形成プロセスに関する考察を行う。
山嵜 勇人*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 湯口 貴史*
no journal, ,
黒部川花崗岩はジルコンのU-Pb年代が10-0.8Maであり、地表に露出する花崗岩の中では世界で最も若い岩体であるため(Ito et al., 2013)、年代学的な研究が盛んに行われてきた。また、黒部川花崗岩の祖母谷温泉付近では、優白質岩と優黒質岩が非常に狭い範囲で混在する領域が認められる。本研究の目的は、この優黒質岩と優白質岩の混在領域における岩石学的情報を取得し、それらの形成プロセスを解明する事である。本研究は両岩相の主要鉱物である石英に着目し、カソードルミネッセンス(CL)像から得られる内部構造とチタン(Ti)濃度の関係から、優黒質岩と優白質岩の形成プロセスの相違を論じる。石英のCL像取得は山形大学のSEM-CL (JEOL IT100A + Gatan mini CL)を用いた。化学分析には名古屋大学宇宙地球環境研究所のEPMA (JEOL JCXA-733)を使用した。分析条件はYuguchi et al. (2020)に従った。優黒質岩と優白質岩の石英のCLパターンの特徴として、累帯構造がない点が挙げられる。一方、多くのCLパターンは石英が複数のサブグレインから構成されることを示唆する。この粒子中ではCL像の輝度の明暗とTi濃度が関連せず、CLパターンとTi濃度の関連を示したYuguchi et al. (2020)と異なる結果となった。Ti濃度の最大値は、優黒質岩が4411ppm、優白質岩が11611ppmであり、優黒質岩と優白質岩の石英のTi濃度の含有量には異なった特徴を持つ。これらをWark and Watson (2006)のTitaniQ地質温度計に適用すると、優黒質岩は728116C、優白質岩は86921Cの温度条件が得られた。今後はデータの拡充により両岩相の生成温度の相違を検証する。
渡邊 みのり*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 湯口 貴史*
no journal, ,
石英は珪長質な深成岩に普遍的に産出する鉱物であり、石英の結晶化プロセスの解明はマグマ溜まりの冷却過程の解明に寄与する。本研究ではカソードルミネッセンス(CL)パターンと微量に含有されるチタン(Ti)濃度の情報から、石英の結晶化プロセスを論じる。研究対象は宮崎県北部の大崩山花崗岩体である。大崩山花崗岩から採取した試料を観察・分析し、CL像およびTi濃度を取得した。石英のCL像取得は山形大学のSEM-CL(JEOL IT100A+Gatan mini CL)を用い、石英中のTi濃度定量は名古屋大学宇宙地球環境研究所のEPMA(JEOL JCXA-733)を用いた。Ti濃度定量の分析条件は、4つの分光結晶(PET)をTiの検出に割り当て、加速電圧15kV, 照射電流60nA, ビーム径20m、1回の測定時間を200s(ピーク: 100s, バックグラウンド: 50sずつ)とし、同一地点で8回(計1,600s)カウントした値を積算することにより1点の定量値を得た。大崩山花崗岩体の石英のCL観察の結果、オシラトリーゾーニングなどの累帯構造を持つ内部構造がしばしば観察される。石英のTi濃度は1711ppmから38210ppmの幅を有し、全点の加重平均は9311ppm(N=148)となった。TiOの活動度を1と仮定し、TitaniQ地質温度計(Wark and Watson, 2006)を適用すると、チタン濃度に対応して最高温度が93920C、最低温度が55668Cと導出された。コアのCL低輝度域において比較的高いTi濃度を持つのに対して、リム部の高輝度域でも比較的高いTi濃度を示す。つまり、CLの輝度の明暗とTi濃度が関連しない可能性を示しており、CLパターンとTi濃度の関連を示したYuguchi et al. (2020)と異なる結果となった。
加藤 あすか*; 加藤 丈典*; 小北 康弘; 湯口 貴史*; 笹尾 英嗣
no journal, ,
本研究では、北上山地の久喜花崗岩体の石英の結晶化プロセスを解明することを目的として、石英のカソードルミネッセンス(以下、CL)パターンとチタン濃度、鏡下観察による形状と産状の情報から石英の結晶化プロセスを論じた。CL像の解析結果、CLパターンとして明暗の領域からなる層状構造を持つもの、輝度の明暗が不規則に分布するもの、輝度の明暗が均質に分布するものが認められた。チタン濃度定量の結果、チタン濃度は12211ppmから35711ppmの定量値を得た。チタン活動度を1とし、Wark and Watson(2006)の地質温度計を用いて結晶化温度の計算を行うと77224から92720Cの広い結晶化温度を得た。また、明暗の領域が層状構造をもつゾーニングの粒子においてCL像の明るい領域ではチタン濃度が高く、暗い領域ではチタン濃度が低い傾向を有する。この傾向はCLパターンが異なっていても同じ傾向を示した。これは、CL像の輝度の変化が石英の結晶化成長に伴ってメルト中から結晶に取り込まれるチタン濃度の変化を反映することを示す。また、広い結晶化温度幅を有することから、石英はマグマが固化する温度(ソリダス)付近から高温までの広い温度条件で結晶化することを示唆する。
小北 康弘; 加藤 丈典*; 湯口 貴史*
no journal, ,
珪長質マグマの地殻への貫入から定置、固化の間に生じる種々のマグマ溜りプロセスは、石英などの初生鉱物の結晶成長の履歴として記録され得る。石英の結晶成長プロセスは、そのカソードルミネッセンス(以下、CL)像観察やチタン濃度定量を行うことで明らかにすることが可能となりつつある。しかし石英中にはチタンの他にも微量に含まれる元素が知られており、その含有量とCLパターンとの関係や、結晶成長の様式との関連については明らかにされていない。そこで本研究では、石英中のチタン濃度・アルミニウム濃度とCLパターンとの関係を明らかにすることを目的として、マグマ起源の石英についてCL像観察とチタン濃度・アルミニウム濃度定量を実施した。また、本研究では電子線マイクロアナライザを用いて石英中のチタン濃度とアルミニウム濃度を同時に定量する技術の構築を目指した。北上山地、遠野複合深成岩体(以下、遠野岩体)の石英に対してCL像観察を行った結果、多くの自形・半自形粒子では、結晶成長様式を推定可能なゾーニング(パターンA)が、他形粒子では、粒子内の局所的な領域のみ高輝度なCLを有する傾向(パターンB)が認められた。遠野岩体の石英のアルミニウム濃度は、ほとんどの分析点で検出限界以下となり、CLとアルミニウム濃度に相関が無いと判断できる。チタン濃度はCLパターンA、BともにCLの輝度に対応したチタン濃度が得られた。チタン濃度から地質温度計を用いて石英の結晶化温度を導出したところ、サンプル(岩石採取地点)ごとの傾向の相違が認められることから、得られた温度に基づいてマグマ溜り内の温度の不均質性を議論可能である。